臨床精神薬理

<ご購入方法について>
・PayPerView(1論文から購入) ・年間購読(公費でのお支払い可)
・プリペイド利用 ※年間購読・プリペイド利用は、サンメディア[email protected]までお問い合わせください。
・PayPerView(1論文から購入) ・年間購読(公費でのお支払い可)
・プリペイド利用 ※年間購読・プリペイド利用は、サンメディア[email protected]までお問い合わせください。
Volumes & issues:
Latest Articles
-
【展望】
-
-
薬理機序と薬理作用のギャップ
28, 3(2025);View Description
Hide Description
薬理機序は薬物が分子レベルや細胞レベルで標的分子(受容体,酵素,輸送体など)に作用し,生理学的変化を引き起こす仕組みを指す.向精神薬は主に受容体遮断(例:抗精神病薬によるドパミンD2 受容体遮断),酵素阻害(例:MAO 阻害薬),輸送体調節(例:SNRI)などの作用を持つ.一方,薬理作用は薬理機序による生理的変化が臨床効果や副作用として現れる現象を指す.薬物のefficacy(有効性)は厳密な臨床試験環境下での最大限の効果を意味し,efficiency(効率性)は日常臨床における実際の効果や副作用,服薬アドヒアランス,治療コストを含めた評価を意味する.しかし,個体差(遺伝子多型,代謝酵素活性),薬物動態(代謝,血液脳関門の透過性),環境要因(ストレス,生活習慣),併用薬,臨床試験と実臨床の乖離などが,薬理機序と薬理作用の間にギャップを生じさせる.さらに,セロトニン,ノルアドレナリン,ドパミンは脳内で相互に影響し合い,単一の神経伝達物質を標的とした薬物であっても,複数の神経回路に波及し,多様な効果や副作用を引き起こす.この複雑性や受容体に対する親和性の違い,神経可塑性の影響も薬理作用を多面的に変化させる.こうした要因から,一つの薬物が持つ複数の薬理機序が,必ずしも全て臨床効果に寄与するわけではなく,一部は副作用や無関係な反応として現れることがある.薬物の効果を適切に評価するためには,薬理機序と薬理作用の関係性を包括的に理解することが重要である. 臨床精神薬理 28:243-249, 2025Key words : pharmacological mechanisms, pharmacological effects, neurotransmitter interaction,drug receptor affinity, clinical efficacy and efficiency
-
-
【特集】 向精神薬の使い分け―サイエンスとア-ト―
-
-
統合失調症に対する抗精神病薬の使い分け
28, 3(2025);View Description
Hide Description
現在統合失調症治療に際し,わが国では数十種類の抗精神病薬が使用できるが,それらをどのように使い分けるかは臨床的大問題である.一つの考え方として,抗精神病薬の“ 力量” をタ-ゲットごとにランキング化し,出来の良いものから順次トライしていく,というアプロ-チは一見合理的に見える.しかし力量を測るタ-ゲットは様々ある.またランキングの基となる,臨床試験やメタ解析の限界に関して認識しておく必要がある.(個人レベルではなく)全体的レベルでは,(副作用ではなく)効果における既存の抗精神病薬間の差は,概してさほど大きなものでもないかもしれない.一方で疾患特性を考慮すると,剤型もポイントとなるかもしれない.選択肢が多い状況は喜ばしいともいえるが,もし特効薬があれば他薬剤の出る幕はないのである.現時点での抗精神病薬使い分けの根拠は,専ら副作用プロフィ-ルおよび使用者の好みに依るところが大きいといえよう. 臨床精神薬理 28:251-256, 2025Key words : antipsychotics, choice, clinical trials, meta analysis, schizophrenia -
抗うつ薬の使い分け
28, 3(2025);View Description
Hide Description
本稿では,新規抗うつ薬の臨床的な違いについて知見を整理する.ネットワ-クメタ解析では,抗うつ薬同士の有効性と忍容性が比較されている.国内外の診療ガイドラインは新規抗うつ薬をうつ病治療の第一選択薬に推奨する一方,具体的な使い分けはほとんど言及していない.その中,カナダ気分・不安治療ネットワ-クの診療ガイドラインは,特定の症状ディメンションに応じた抗うつ薬治療を紹介しており,日本臨床精神神経薬理学会のエキスパ-トコンセンサスは前景症状に基づく抗うつ薬の選択を示している.しかし,モノアミンに関連する症状の仮説は理論的な域を出ず,最近の解析で選択的セロトニン再取り込み阻害薬とデュロキセチンが改善させる症状は同様であった.また,副作用,用法,薬価などには薬剤ごとに違いがある.こうした情報を患者と医療者が共有し,双方向的なコミュニケ-ションを通じて,患者個々に最適な治療を選択することが求められる. 臨床精神薬理 28:257-264, 2025Key words : antidepressant, depression, guideline, expert consensus, symptom -
うつ病に対する増強療法の使い分け
28, 3(2025);View Description
Hide Description
治療抵抗性ないし難治性のうつ病に対しては様々な治療戦略があるが,補助療法や増強療法は最も重要な治療選択肢である.多くのうつ病診療ガイドラインでも特に非定型抗精神病薬による増強療法が推奨されており,最新のガイドラインでは,その中でもアリピプラゾ-ルとブレクスピプラゾ-ルがファ-ストラインとされている.本稿では,最新のエビデンスを収集し,特に「日本人を対象とした成人うつ病に対するアリピプラゾ-ルおよびブレクスピプラゾ-ルの有用性」についてのネットワ-クメタ解析を紹介した.この解析では日本人においてもこの2 剤の有用性が示されたが,有効性については用量による大きな違いが無かったのに対し,両薬剤とも低用量の方が忍容性や安全性に優れていたため,低用量から開始することが望ましい. 臨床精神薬理 28:265-269, 2025Key words : major depressive disorder, aripiprazole, brexpiprazole, meta-analysis -
双極症の躁病エピソ-ドに対する抗精神病薬の使い分け
28, 3(2025);View Description
Hide Description
躁病エピソ-ドは双極症の治療における重要な局面であり,迅速かつ柔軟な対応が求められる.本稿では抗精神病薬の選択と用量設定について,エビデンスと臨床経験をもとに論じる.急性期では抗精神病薬と気分安定薬の併用が推奨され,有効性と安全性のバランスが重視される.薬剤選択では,aripiprazole やolanzapine が高い反応率と安全性から推奨される一方,長期使用を見据えた副作用リスクの低減が重要である.標準的な開始用量を設定しつつ,患者の状態に応じた調整が必要で,維持療法にも同様の考慮が求められる.筆者は,長期的安全性を重視し,高用量aripiprazole と気分安定薬の併用を第一選択とし,その他の薬剤についても慎重に適応を検討すべきと考える.臨床精神薬理 28:271-275, 2025Key words : bipolar disorder, manic episode, antipsychotics, mood stabilizer, combination -
双極症の抑うつエピソ-ドにおける薬物療法:抗精神病薬の使い分けを中心に
28, 3(2025);View Description
Hide Description
双極症の抑うつエピソ-ドは患者のQOL を著しく低下させ,自殺のリスクも高い重要な病態である.治療選択肢として,近年では第二世代抗精神病薬の有効性が注目されており,本邦ではquetiapine extended-release,lurasidone,olanzapine が保険適用を有している.これらの薬剤はそれぞれ特徴的な臨床プロファイルを示す.Quetiapine は不安症状を伴う症例で有効性が示されており,早期からの抗うつ効果と睡眠- 覚醒リズムの調整作用を特徴とする.Lurasidone は代謝系副作用が最小限であり,若年成人や代謝性疾患を合併する患者での使用が推奨される.Olanzapine は急性期の重症例,特に不安や焦燥を伴う症例での有効性が確立されている.これら薬剤の選択においては,患者の臨床像,身体状態,生活環境を総合的に評価し,個別化した治療戦略を立てることが重要である.本稿では,双極症の抑うつエピソ-ドに対する第二世代抗精神病薬の特徴と使い分けについて,主要なガイドラインの推奨と臨床経験に基づいて概説する.臨床精神薬理 28:277-284, 2025Key words : bipolar depression, second-generation antipsychotics, quetiapine extended-release,lurasidone, olanzapine -
睡眠薬の使い分け
28, 3(2025);View Description
Hide Description
不眠症状は人口の10 ~ 20%が経験する一般的な健康問題であり,年齢とともに増加する睡眠薬使用の適正化が課題となっている.かつては睡眠薬といえばBZ 受容体作動薬を指し,不眠症に対して頻用されてきたが,ふらつきによる転倒リスク,記憶障害,せん妄などの認知機能への影響,さらには依存形成や離脱症状の問題があったことから,代替薬としてしばしば鎮静系抗うつ薬が使用されてきた.近年登場したメラトニン受容体作動薬やオレキシン受容体拮抗薬は,従来薬と同等の効果を持ちながら有害事象リスクが低く,不眠症治療の新たな選択肢として注目されている.本稿では,鎮静系抗うつ薬を含めた各睡眠薬の特徴と使い分けについて,近年発表されたエキスパ-トコンセンサスを踏まえた治療アプロ-チについて解説する. 臨床精神薬理 28:285-291, 2025Key words : sleep, insomnia, benzodiazepines, dual orexin receptor antagonists, melatonin agonists -
不安症群および強迫症におけるSSRI,SNRI の使い分け
28, 3(2025);View Description
Hide Description
不安症群は,過剰な恐怖および不安と関連する行動の障害特徴をもち,社交不安症,パニック症,全般性不安症を代表とする疾患群である.強迫症は,繰り返し生じ持続する思考・衝動・イメ-ジである強迫観念と,それによる苦痛を中和する目的で行われる強迫行為を特徴とする疾患である.薬物療法としては選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)と一部のセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)の有効性が示されている.本稿では,サイエンスの側面から国内のガイドラインおよび2023 年にアップデ-トされたWorld Federation of Societies of Biological Psychiatry(WFSBP)ガイドラインを中心にそれぞれの薬剤の位置づけを概説し,さらにア-トの側面として,薬物療法と相補的な機能をもつ精神療法,特に認知行動療法を活用した日常臨床における工夫について紹介する. 臨床精神薬理 28:293-300, 2025Key words : anxiety disorder, obsessive-compulsive disorder, SSRI, SNRI, psychotherapy -
不安症および強迫症に対する抗不安薬(SSRI,SNRI 以外)の使い分け
28, 3(2025);View Description
Hide Description
現在,各国の不安症および強迫症に関する診療ガイドラインでは,選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI),あるいは,セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)が第1 選択薬として推奨されている.不安症の場合,SSRI,SNRI 以外の選択肢として,三環系抗うつ薬,mirtazapine,アザピロン系,ベンゾジアゼピン,GABA 作動薬〔pregabalin,抗てんかん薬(gabapentin,lamotrigine,topiramate,バルプロ酸,levetiracetam,carbamazepine)〕,抗ヒスタミン薬,αおよびβアドレナリン作用薬(propranolol,clonidine/guanfacine), 非定型抗精神病薬(quetiapine,olanzapine,risperidone)などがあげられる.強迫症も第一選択薬はSSRI である.多くのガイドラインで,第二選択薬に,三環系抗うつ薬のclomipramine,あるいはmirtazapine があげられ,さらに難治性の場合,SSRI とhaloperidol,quetiapine,olanzapine,risperidone の併用療法が推奨されている.使い分けの基準には,性別,精神症状の種類,重症度,身体疾患の有無,他の併用薬の有無,などがあげられるが,結局,使用してみた薬剤の有効性と安全性のバランスにつきる.有効性や安全性が低い場合,薬剤のスイッチング,併用,増強療法が試みられる. 臨床精神薬理 28:301-308, 2025Key words : pregabalin, quetiapine, social anxiety disorder, panic disorder, generalized anxietydisorder
-
-
シリ-ズ
-
-