眼科グラフィック
眼科専門医を目指す若手医師や開業医に向け、臨床で役立つ知識・技術を、豊富なカラー写真でわかりやすく解説。
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メイン特集【最新! 緑内障点眼薬を使いこなす】
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2 【2章 緑内障配合点眼薬の特性と臨床的活用】
15, 1(2026);
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緑内障はわが国における失明原因の上位を占める慢性進行性疾患であり,その病態修飾に現時点で確立した治療法は眼圧下降のみである.薬物治療は最も広く実践される治療手段であり,初期治療の段階では点眼薬が中心的役割を担う.点眼治療は患者自身が担う医療行動であるため,薬剤の薬理作用や安全性だけでなく,治療行動の実行可能性,アドヒアランス,生活動線との適合性といった要素も治療成績に直結する.初期治療の段階では単剤で治療が開始されることが多いが,視野障害の進行のリスクが高い症例や,目標眼圧を低く設定せざるを得ない高リスク症例,初期眼圧が高値である症例などでは,複数薬の併用が早期から必要となることも多い.Ocular Hypertension Treatment Study(OHTS)においても,高眼圧症から緑内障への移行を予防するために,治療開始5 年後には約40 %の症例で2剤以上の薬剤が必要であったと報告されている1).これは,単剤のみで長期的に十分な眼圧コントロ-ルを維持することの難しさを示唆している.一方,併用薬が増えると点眼行動は複雑化し,アドヒアランス低下を招きやすい.複数の研究でも,「処方どおりの点眼を実行できていない緑内障患者が少なからずいる」ことが示されている.点眼忘れ,外出時に携行できないことによる中断,残量の誤認など,日常生活に紐づくさまざまな要因が治療実行性を阻害する.こうした背景から,複数の薬剤を1 本にまとめた配合点眼薬は,眼圧下降効果と治療行動の簡素化を同時に満たし得る重要な治療選択肢として位置づけられている.本稿では,配合点眼薬の利点と限界,薬理学的特徴,患者背景を踏まえた適応判断,さらには治療戦略における位置づけについて詳述する.
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目次
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メイン特集【最新! 緑内障点眼薬を使いこなす】
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4 【4章 緑内障点眼薬の最新動向】
15, 1(2026);
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緑内障は慢性疾患であり,本邦において中途失明原因の第一位となっている.緑内障による視野障害や視力障害は生活の質を著しく低下させる可能性があり,適切な治療開始と継続が不可欠である.現在,緑内障に対するエビデンスに基づいた唯一確実な治療法は眼圧下降である1).そして多くの場合は治療の第一選択は点眼治療となる.緑内障点眼の歴史を振り返ると,1967 年に副交感神経作動薬であるピロカルピン塩酸塩(以下,ピロカルピン)が登場し,その後に交感神経作動薬が続き,1980 年代にはβ遮断薬が発売された.β遮断薬は毛様体上皮における房水産生を抑制することで眼圧下降効果を示し,高い有効性と安全性で主流薬となったが,心疾患や喘息などの全身副作用が問題点であった.1990 年代後半にはプロスタグランジン関連薬(現在はEP2 受容体作動薬などとの区別のためFP受容体作動薬と呼ばれる)が登場し,ぶどう膜強膜路流出促進による高い眼圧下降効果と1 日1 回の利便性で第一選択薬となり,現在でも緑内障治療の中心的な役割を担っている.また,炭酸脱水素酵素阻害薬の点眼も登場し,内服投与と比較して全身副作用を減らし,緑内障点眼の選択肢を広げた.2010 年代には配合点眼薬の開発・導入が進み,アドヒアランスの向上や患者負担の軽減に寄与している.さらに新しい作用機序の薬剤も登場し,2012 年発売のアイファガン®点眼液0.1 %(ブリモニジン酒石酸塩)はα 2受容体作動薬として房水産生抑制とぶどう膜強膜路流出促進作用を示し,神経保護効果も報告されている.2014 年にはROCK阻害薬が承認され,線維柱帯からの流出促進という新たな機序を有した.このように緑内障点眼は進化と進歩を続けてきた.2018 年にはEP2 受容体作動薬であるエイベリス®点眼液0.002%(以下,エイベリス®)が発売され,長らく第一選択薬であったPG製剤と並んで,新たな第一選択薬としての役割を担っている.また,2025 年8 月にはFP受容体とEP3 受容体のデュアル作動薬であるセタネオ®点眼液0.002 %(セペタプロスト,以下,セタネオ®)も発売され,注目を集めている.さらには近年ではiDose®等のドラッグデリバリ-システム(DDS)の開発も進んでおり,緑内障点眼治療は新たな局面を迎えている.本稿では最新の緑内障点眼やDDSについて解説する. -
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連載
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【動画であなたもできる!知っていれば手術がうまくなる! とっておき私の手術の1テクニック 第15回】Plication法における折り返し操作を確実に仕上げる1テクニック
15, 1(2026);
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サブ特集【2026年注目! 論文・ガイドライン・トピックス〜私の厳選3 本〜】
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メイン特集【最新! 緑内障点眼薬を使いこなす】
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1 【1章 緑内障点眼薬の分類】
15, 1(2026);
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緑内障は我が国における失明原因の上位を常に占めており,社会的・医療経済的に極めて重要な疾患である.2000~2001年にかけて行われた日本緑内障学会多治見疫学調査(多治見スタディ)では,40 歳以上の日本人における全緑内障の有病率は5.0%と報告された1).さらに,40歳以上人口の増加とともに患者数は増加傾向にあり,今後も主要な失明原因として社会的影響は大きいと考えられる.また,緑内障の視神経障害および視野障害は,進行性かつ不可逆的であり,一度失われた視機能を回復させる手段は現時点で存在しない.患者自身の自覚が乏しいままに障害が徐々に進行するため,早期発見・早期治療介入により障害の進行抑制をすることが,我々眼科医にとって重要課題となる.現在,緑内障に対するエビデンスに基づいた唯一確実な治療法は「眼圧下降」である.また,緑内障の病型や病期にかかわらず眼圧下降は有効である2).緑内障に対する眼圧下降治療には,薬物治療,レ-ザ-治療,手術治療の選択肢があるが,いずれも目的は「眼圧下降」である.しかし,いずれの治療法でも眼圧下降によって視神経障害および視野障害が回復することはないため,可及的に低侵襲な治療による眼圧下降が求められる.したがって,治療の第一選択としては,最も低侵襲な点眼治療が行われることが多い.現在,多数の緑内障治療薬が認可されているが,薬物治療の原則は必要最小限の薬剤と副作用で最大の効果を得ることである2).そのためには,各薬剤の作用機序,用法・用量,得られる眼圧下降効果,副作用,禁忌といった特徴を熟知しておくことが必須となる.また,冷所保存など特殊な保存方法が必要な製剤もあるため,把握しておくとよい.同一系統の薬剤でも点眼により保存法が異なるので必ず確認することが必要である(表1).
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